Lord社のStainlessカミソリの一つ。特徴は封入が5枚(大抵は10枚入り)で、お値段は他のStainlessカミソリ刃と同額ということ。要するにLord Super Stainlessのハーフ版じゃないかと思うかもしれない。
そうだと思う。でもちょっと待って欲しい。ASCO Super Stainlessはなんと剃り味も半分になるんだ!
さすがエジプト人。古代から数学が発達した国だけあって完璧な計算式だね。
ってなんでやねん!
エジプト人って芸が細かいんだなとちょっと感心しちゃったじゃないか。値段は同じなのに同封枚数が半分で性能も半分って一体どういうつもりなんだろうか。ひょっとしたら体を張ったギャグなんだろうか。しかし実際問題、製造ラインの違いで同社ステンレスクラスのLord Super Stainlessと比較して月とスッポンほどのスペックの差があるのだ。
もしかしたら使用ホルダーであるMerkur34Cと相性の悪い替え刃なのかもしれない。しかしLord社の他の製品と比較して初回から髭を切断する時の抵抗が強く、剃り残しも多い上に妙にアルムが沁みるとなればちょっとホルダーとの相性が悪いというレベルではない。明らかに刃のパフォーマンスが低いと言える。これで値段が半分なら渋々納得するところなのだがお値段は強気らしい。意味が分からない。
二回目からは刃の当て方を工夫して試行錯誤したところ、剃り残しが大幅に改善された。この刃とホルダーの組み合わせは肌に対して相当エッジを立てないと剃れないようだ。それで剃り残しは改善されたのだが相変わらず刃が切れない。小手先の工夫で剃り味はどうにか出来ても、根本的な部分でナマクラなのはどうしようもない。一回目、二回目ともにアルムがよく沁みるのがつらい。三回目になるともう髭を刃で切っているのか鋸で引いているのか分からないほど手ごたえ十分。
結局この替え刃に関しては二回目以降は回を追う毎にアルムブロックが沁みるようになるので四回目まで使用して破棄した。さて、ここでこの替え刃についてふと考えた。そもそもLord社は他にもよく切れて長持ちするステンレス製カミソリを製造しているのに、なぜこのような切れない粗悪な替え刃を製造し続けるのか。先に挙げたLord Super Stainlessとの差は、計算上封入量半分で同価格なので普通の人はこんなに剃り味の悪い粗悪品を二者択一で選んで買うようなことはないはずだ。つまりこのASCOを買う人というのはLord Super Stainlessの10枚入りパックを買うほどの金銭的余裕がないのに、髭を剃る為にカミソリを必要とする人たちのことであると思われる。
つまり発展途上国の貧困層。それもスラムの最底辺に近い辺りなのではないだろうか。世の中には多くの金属ホルダーを集めたり、10年かかっても使い切れない量のシェービング・ソープを買い集めたりする人がいる一方で、一回目以降剃れば剃るほど痛くなるこの替え刃を10回あるいは20回と使い続ける生活をしている人がいる。それがこの替え刃が暗に示している現実なのではなかろうか。
Lord社も営利企業なので採算の取れない事業は続けない。であるにも関わらずASCOのような粗悪な替え刃が製造中止にならず市場に出回り続けるということは、未だ世界には厳しい経済格差があるのだということをまざまざと映し続けている。いつかLord社がASCOのような粗悪な替え刃を生産終了したときこそ、きっと世界は良くなったと言えるのだろう。
なんか妙に説教臭いレビューになったな。
使用ホルダー:Merkur34C
尚、評価は5段階により最上位得点を5点とする。
価格………100枚購入時の金額
入手性……店頭、通販問わず日本での入手のし易さ
耐久性……数値が低いほど捨てたくなる。尚、剃り味とは別物
鋭さ………少ない力でヒゲを切断する能力
滑らかさ…剃り残しの多寡